練鑑物語 前編 

練鑑物語

この物語はフィクションです。

時代は就職氷河期

平成9年春

高校を卒業した私はキャバクラのBoyをやっていた

理由は単純だ

面接したらその場で採用、給料も悪くなかった

単純な頭だった

住まいは豊島区要町 最寄駅は千川、池袋から2駅、タクシーで勤務先の池袋西口までは15分

店は違うが一緒に住んでた女も水商売だった

18歳、毎日イキがって格好つける事だけを考えていた 単純だ

夏が過ぎて池袋の夜も肌寒くなってきた頃の話だ

休日で女と家でのんびりとしていた午前中に親から電話がかかって来た

「板橋警察署の人がウチに来たけどなんかしたんね」

「心当たりはないけど要町のマンションで待ってるから警察に来るよう言って」

そう言って電話を切ったはいいものの

心辺りが無い訳では無かった

高校生の頃、遊んでもらっていた先輩の風俗店に18歳未満の女を何人も働かせていた事があった

同居の女に今から警察が来る事を伝えた

とりあえずしばらく合えなくなる可能性があるって事でセックスをした

賢者タイムの余韻は警察の鳴らすチャイムによって終わりをつげた

刑事が令状を持って5人ほど入って来た

2Kの狭い部屋はひっちゃかめっちゃかに荒らされた

特に何も出てこない

押入れの中に当時ファンだったAV女優 柚月真菜の写真集があったのだが

刑事がそれを持って

「コレは何だ」

と言ってきた

大切なものですと答えておいた

イキがってはいても初めてのガサ入れでテンパっていた

職場の人に電話を掛けようとしても上手く電話の操作が出来ない

逮捕状が出てるのでそのままマンションの外へ連れられる

女が泣きながら追いかけてくる

「出て来たら籍入れようね」

その叫び声を聞きながらGTRの後部座席に座らされた

GTRに大人5人とか有り得ないくらいギュウギュウだ

車を走らせて直ぐに手錠をかけられた

涙がこぼれ落ちた

警察署での取り調べ中に何が食べたいか聞かれたのでカツ丼をお願いした

今回の逮捕は児童福祉法違反になるらしい

未成年の私は少年扱い

留置所も大人がいない少年専用の部屋

当時の留置所のトイレは壁が無い、剥き出しだ

翌日バスに乗せられて都内の警察署をいくつか回って霞ヶ関の検察庁へ向かう

途中で我がホームグラウンド池袋西口を通る

遠い世界に来てしまったようだ

しばらくして霞ヶ関に到着

かなりの台数の護送バス

手錠と腰縄で繋がれた人達が階段を降りて行く

かなり深い

どこまでもどこまでも降りて行った先に鉄格子だらけの部屋がいくつもある

決められた牢屋にみんな押し込まれていく

少年用の部屋には私を含めて3名

2人は共犯でカツアゲで捕まったそうだ

ジャイアンとスネ夫みたいな体型のコンビだ

ジャイアンは手錠をガチャガチャやってる

やめてくれ!笑いそうだ

警察署に戻って7日間の勾留が決定

おふくろが面会に来てくれたが泣いていた

やめてくれ、もらい泣きしてしまう

20歳越えてればこの犯罪なら不起訴か執行猶予

しかし未成年だとそうはいかない

警察署で7日勾留が終わった後は約4週間の鑑別所生活が待っている

7日の留置所生活は特に何も無い

少年は私の他に入って来たのは最終日の夜だ

バイクの暴走行為で捕まったらしい

朝起きて少し話をした

お互いの検討をたたえてお別れした

留置所のおっちゃんが

「少年!タバコ吸いたいだろ!」

と運動の時ににこやかに少年の檻に向かって話しかけて来たが直ぐに留置のオヤジに連行されて行った

さて、明日からは

東京少年鑑別所

又の名を

練馬鑑別所

略して

練鑑

後編へ続く

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