丸留物語第12話 新聞配達さん

丸留物語

2室のサトウさんが出て行ってから数日後

新たなる住人がやってきた。

しかしまぁ次から次へと留置所へは逮捕された奴らがやって来る。

直ぐに出ていく人もいればいつまでも残ってる人もいる。

起訴される人は大体2ヶ月で拘置所へ移送される。

留置所はルールが甘い分楽で良いけどやる事が無さすぎる。

拘置所は自分の金で好きな食べ物が買えるし本も結構持ち込める、割と暇つぶしできる。

タバコは吸えないけど。

話がそれた。

2室に新たなる住人がやってきた。

40代後半の目付きがギョロッとした小太りのおじさん。

早速ヤンキー君と私とで調べを行う。

聞けばこうだ。

コンビニでエンジンのかかってる軽自動車を盗んだ数日後に職質くらって逮捕。

「コレから悪い事しようと思ってた時に捕まっちゃいましたよ」

おそらく悪い事等するつもりも無く単純に足が欲しかっただけだろう。

しかし臭う、このおじさん足が臭い!

ヤンキー君がたまらず「足くさっ!」と言ってくれた。

ありがとう、さすが特攻野郎だね

オジサンは俯いてた

「2B!この人足臭いから洗わないとダメだよ!」

足だけ洗わせてもらってオジサンが戻ってきた

戻ってきた時は裸足だったが臭いは無くなっていた、安心する。

調べを再開する

職業は新聞配達員

泊まり込みで働いて早朝と夕刊を配る他に集金もやるらしい。

そんな生活に嫌気がさして唯一の趣味であるゴルフ道具1つ持って車を盗み新たな未来を夢みていた所捕まったってやつだ。

今回の身元引き受け人は新聞屋の社長に頼むと行っていたからまた元の生活に戻るのだろう。

まぁ、2室の生活に害をもたらす様なタイプでは無さそうだ。

留置所では週に1度買い物が出来る。

切手、便箋、ノート、洗剤、柔軟剤、お菓子、タバコ、ニベア缶、その他日用品

などなど

近くのセブンに留管職員が買い出しに行ってくれる。

週に一回洗濯もしてくれるが基本洗剤は少ししか使わない

しかし自分で買った物を使ってもらう事も出来る、柔軟剤も入れてもらえる。

留置所の中では良い香りなんて無縁だから柔軟剤を使うだけで娑婆っけを出せる。

お菓子は500円コース、1000円コース、1500円コースとある。

お菓子は15時から30分間だけ食べる事が出来る。

拘置所は好きな時に食べる事ができる。

注文出来るのは毎週月曜日だけだから火曜日に留置所に来た人は一週間お菓子食べれない

同じ房の人が優しければお菓子のお裾分けをしてあげる。

お菓子を与える事で優位にたてる。

そんな世界だ。

新聞配達さんにお菓子を与える事で私とヤンキーくんはランクが高くなる。

クッキー1つでかなり感謝される

新聞配達さんは所持金が全く無いらしい

自分の唯一の所有物であるゴルフクラブを自分の代わりに中古買取りに出して来てくれと担当に交渉してる

出来るわけ無いじゃん!

、、、え、マジで?

優しい留管職員は代わりにゴルフクラブを金に変えてきてくれた。

見事お金をゲットした新聞配達さんはお菓子を注文する事ができる!

おやつの時間に我々からお菓子を貰うたびに

「今度お菓子買ったら自分が振る舞いますんで!」

ニコニコしながら言ってた。

このオジサンは慣れて来て私達が怖く無いと分かると結構グイグイ会話に入ってくる様になった。

会話と言えばシャバに出て何が食べたいとか好きな女のタイプとかどこに行きたいとかどんな歌が好きだとか記憶に残らない様な物ばかり。

そこに新聞屋がグイグイ来る!

「自分は〜アレが好きです!」

「自分は〜昔どうのこうの」

「自分は〜」

「自分は〜」

ウザかったのだろう

ヤンキー君がこう言った。

「うるせ〜新聞屋〜!」

新聞屋さんは俯いた、その数日後留置所を去って行った。

コメント

タイトルとURLをコピーしました